知っておきたいしくみ

未払い残業代の請求方法と割増賃金について

給料明細を確認してみて、残業代が支払われていなかったり、金額が少ないようなら、自分できちんと計算しなおした上で、まずは会社に対して請求しましょう。

また会社が応じてくれないようであれば、行政機関や専門家に相談して、時効がこないうちに解決を計りましょう。

この記事では、未払いの残業代の計算や請求方法についてまとめていますので、ご参考にしてください。

残業代の計算方法は?

基本的に残業代の計算は、以下の式によって行えます。

時給×残業時間×割増率=残業代

それぞれの項目について、もう少し詳しく考えます。

時給について

給料が時給制でない場合は、まず今の給料を時給に換算する必要があります。

月給制の場合で、計算に含めてよいものは以下の通りです。

基本給、役職手当、資格手当、社員一律に支払われる通勤手当、社員一律に支払われる住宅手当

逆に計算に含めないものは、以下のような金銭です。

ボーナス、通勤手当、住宅手当、単身赴任手当、家族手当(扶養手当)、子女教育手当、見舞金や退職金

月給の額が確定したら、次にそれを「所定労働時間」で割れば、時給が算定できます。

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書で定められている休日や残業時間を除いた労働時間の事です。

月によって、休みの日数も変わってくるので、まず一年間通しての時間を計算し、それを12か月で割って平均の労働時間を出します。

例えば、所定労働時間が1日8時間で、年間の休日が全部で120日あるケースで考えてみます。

ひと月の平均の所定労働時間は、以下の計算式で求められます。

1 (365日-年間休日120日)×1日8時間=1,960時間
2 1,960時間÷12ヶ月=1ヶ月の所定労働時間163.33時間

後は、月給を1ヶ月の所定労働時間163.33時間で割ると、時給が算定できます。

残業時間について

その月の残業時間が何時間だったか、これは請求する時に絶対に必要な情報ですが、自分の感覚で伝えても受け入れてもらえる可能性は低いでしょう。

やはり、証拠が必要です。

タイムカードが手に入るなら、それをコピーしたり、写真を撮っておきましょう。

タイムカードの入手が難しい場合は仕方がありませんから、毎日メモに勤務時間を記録しておきましょう。

この時のポイントは、業務内容や勤務状況、具体的に記録しておくことです。

また、勤務中のメールやFAXでのやり取りなども、その時間に仕事をしていたことの証拠になりますから、プリントアウトするなどして保管しておきます。

その他、Suicaなど通勤に利用するカードの履歴もある程度勤務時間を証明する証拠となります。

割増賃金について

未払い残業代の計算に必要となるもう一つの情報が割増率です。

労働基準法では、労働時間として1日8時間、週40時間という上限が決められています。これを法定労働時間と言います。

これを超えて働く場合、時間外労働となり、割増賃金をもらえることになります。

その場合の割増率は25%以上となっています。

また月に60時間を超える部分については50%以上の割増率となっています。

さらに、時間外労働以外にも、深夜の時間帯(PM10時からAM5時)に働いた場合の深夜割増、就業規則などで休日と定められた日(法定休日)に出勤した場合の休日割増があります。

深夜割増は割増率25%以上、休日割増は割増率35%以上と定められています。

時間外労働に加えて深夜労働があったり、休日労働に加えて深夜労働がある場合には、割増率も両方を足して計算します。

未払い残業代の請求方法について

未払い残業代を請求には、以下のように5通りの方法が考えられます。
(1)会社と直接交渉する
(2)内容証明郵便で請求
(3)労働基準監督署に申告
(4)労働審判で請求
(5)通常訴訟で請求

基本的にはこの5つの方法を番号順に進めるのが良いでしょう。

なぜなら、番号が進むほど請求するほうもされるほうもプレッシャーが大きくなり、心身への負担や費用負担が増すためです。

また、なるべく早い段階で弁護士や法テラスなどに相談し、専門家のサポートやアドバイスを受けながら進めるのが安全です。

特に(2)以降については、自分だけで進めると返って痛い目に遭うこともありますから、注意してください。

では、それぞれの方法について詳しくみていきましょう。

会社と直接交渉する

会社を辞めるつもりはなく、なるべく会社と争わずに解決したいなら、また会社に幾らかでも法令遵守の意識が見られるなら、まずは会社に尋ねてみるのが良いでしょう。

その際には、きちんとした根拠を示して主張しなければ、ただの言いがかりとみなされ、クレーマー扱いされる危険があります。

ですから、自分が働いた時間については毎日メモを取っておき、残業が何時間発生して、いくら支払われていないかを提示できるよう準備をしておきましょう。

内容証明郵便で請求

会社を退職する覚悟があるなら、内容証明郵便によって請求する方法があります。

内容証明郵便とは、誰が誰に対してどのような内容の手紙をいつ送ったかを証明できる郵便の送り方です。

内容証明郵便を送ったからと言って、相手に対して強制力が生まれるわけではありませんが、裁判になった時の証拠としての効力があります。

そのため一般的に内容証明郵便を受けとった方は、きちんと対応しなければ訴えられるかもしれないという不安から、何らかの対応をすることが多いものです。

特に、弁護士などの法律家に依頼して、法律家の名前入りで内容証明を送付するなら、受けとった側に覚悟が伝わり、それだけで未払いの残業代が支払われることも少なくありません。

但し、この方法が成功するにしろ失敗するにしろ、その後は会社に居づらくなることは間違いありません。

その職場で働き続けるつもりであるなら、その事をよく考えた上で決定すべきでしょう。

労働基準監督署に申告

未払いの残業代について、労働基準監督署に通報・申告するメリットは、一つには費用がかからないということです。

この点では、弁護士などに最初から頼むよりは、まず労働基準監督署に相談するほうが費用的な負担なく解決につながるかもしれません。

但し、未払い残業代が高額であったり、複数人からの申告がなければ、なかなか動いてくれないという場合もあります。

また十分の証拠も必要になります。

そのような状況に該当しない場合は、ただのアドバイスだけにとどまり、期待外れに終わることがあります。

労働審判で請求

会社がかたくなに請求を拒否するような場合は、労働審判が活用できます。

労働審判とは、労働問題を解決するための法的な制度であり、訴訟を行うよりも短期間で解決できる可能性があります。

それでも、有利な審判を得るためには、一定の法律知識や資料等の準備が必要なため、弁護士などのサポートを受けながら行う必要があるでしょう。

通常訴訟で請求

労働審判でも解決がつかないような問題や会社と徹底して戦いたいという場合には、通常訴訟という選択肢があります。

労働審判が基本的に話し合いで解決するための制度であるのに対して、訴訟(裁判)になると、勝つか負けるかの話になります。

労働審判よりもさらに法的な知識や交渉力が必要となるため、弁護士に依頼する必要があるでしょう。

その分だけ費用も時間もかかりますから、勝てる可能性が高くて、かつ支払われる金額の見込みが大きい場合の方法と言えるでしょう。

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