空き家対策特別措置法と空き家の管理方法・活用のアイデア

平成27年に施行された空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)の内容と注意点、そして空き家管理の方法や活用アイデアをまとめました。

空き家問題の現状について

空き家問題と言っても、いったい何が問題なの?という方もおられるかもしれません。

空き家に関して問題とされている点をまとめると以下の3点となります。

  1. 空き家の数が急増している
  2. 管理されていない空き家により地域に悪影響が生じている
  3. 空き家の有効活用がなされていない

それぞれについてもう少し詳しくみていきましょう。

3軒に1軒が空き家になる時代

空き家の数は年々増え続けています。

30年前には全国で330万戸だった空き家は、平成30年には1000万戸を突破すると言われており、さらに15年後には2000万戸となり、総住宅数の約30%が空き家になるという予測もあります。

そうなると、3~4軒に1軒が空き家ということになります。

このように空き家が増えているのは、子がそれぞれ自分の家を持つようになったことや、以前よりも家の資産価値が低下して売ろうとしても売れなくなったことなどが挙げられます。

今後はさらに少子高齢化が進むにつれて、ますます家が余ることが予想されますが、空き家が増えると地域に及ぶ影響が心配されます。

放置された空き家の害

「家は人が住まないとすぐに傷む」と言われるように、空き家がきちんと管理されていないと急速に老朽化が進んでいきます。

締め切った部屋では湿気がこもり、カビが発生して、建物の木部は腐っていきます。

やがてシロアリやクモ・ゴキブリなど害虫が増え、ネズミや猫なども住みつきます。

また誰も住んでいないとわかると、敷地内にゴミの不法投棄がなされたり、ひどくなると不法侵入や放火が行われます。

庭が手入れされていないと立木が隣家や通行人の妨げとなりますし、補修されないままの瓦や外壁が脱落して近くの人や物に被害を与えることも考えられます。

このようにして、適切な管理がされずに放置された空き家は、街の景観を損なうだけでなく、衛生面・治安の面・安全面で様々な問題を生じさせることになります。

そして、所有者が不明だったり、相続で揉めているなどの理由により、管理されていない空き家の件数は増加しています。

空き家が活用されない理由

居住者のいなくなった家はそのまま活用されないと空き家となりますが、空き家率が急増しているということは、十分な活用がされていないことも原因と言えます。

空き家が十分に活用されてこなかった理由として以下のような点が考えられます。

  • 活用の選択肢が少なかった
  • 活用するために費用がかかる
  • 放置していても大きな問題はなかった
  • 所有者不明で勝手に処分できない
  • 相続や共有者の話し合いがまとまらず活用しようにもできない
  • 所有者が認知症になり売却や賃貸ができない
  • 適切に管理されないためすぐ老朽化する

このような理由で空き家が活用されないと、やがては地域住民の迷惑となり、安全を脅かすものにさえなります。

逆に十分に有効活用されれば、所有者にとっても地域にとっても良いことばかりになります。

空き家の活用を促進するためには、放置するとデメリットが大きくなるような制度と共に、利活用を助成するような制度や税金面の優遇措置が必要とされてきました。

空き家対策特別措置法によって変わったこと

空き家対策特別措置法は平成27年2月26日より一部施行されており、同年5月26日には完全施行されました。

この法律の目的は、「地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進する」ことにあります。

この目的に示されているように、空き家による近隣への悪影響を防ぐと共に、空き家の活用を促進することで空き家問題を制度面から解決していくために本法律が制定されました。

それ以前と大きく変わったポイントは、空き家の所有者や管理者に対して市町村が助言・指導・勧告・命令・代執行を行えるようになったということです。

それまでは、地域に危険な空き家が存在するとしても、基本的には持ち主が動かなければ撤去する事ができませんでした。

この法律ができたことによって、危険度の高い空き家に対しては市町村を通して効果的に対処できる見込みが出てきました。

また、この法律は現在の空き家の所有者に対して、適正な管理や活用を促す内容となっています。

そのしくみについて少し詳しくみていきましょう。

空家等と特定空家等について

空き家対策特別措置法では、対象とする空き家を「空家等」「特定空家等」という名称で呼んでいます。

空家等とは?

[建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)]と定義されています。

この定義にある「常態」とは、おおむね1年間と考えられています。ですから、1年以上居住や使用がされていない空き家が「空家等」に該当します。

また建築物だけでなく付属する物置や看板、敷地内の立木なども対象となる点には注意が必要です。ただし、国や地方公共団体が所有・管理している公共のものは除外されます。

「空家等」は市町村のデータベースに登録されて、その後も監視の対象となります。

特定空家等とは?

特定空家等は、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」のことです。

つまり、市町村のデータベースに登録された「空家等」の中から、周辺環境に悪影響を与える可能性の高いものが「特定空家等」として認定されることになり、市町村からの助言・指導・勧告・命令・代執行の対象になります。

特定空家等に認定されてからの流れ

「特定空家等」に認定されると、改善を促すために空き家の所有者や管理者に対して以下のように段階的に働きかけがなされていきます。

1 助言・指導

市町村長から所有者に対して空き家の状態の説明があり、解体など改善措置をとるように促される。

2 勧告

助言・指導によって改善がなされないと、書面によって勧告がなされ、宅地については固定資産税と都市計画税の特例から外されてしまいます。その結果、翌年度より固定資産税で6倍、都市計画税で3倍多く税金を納めなくてはなりません。

3 命令

勧告が無視されると、猶予期限を設けた上で措置命令が出され、違反した場合には50万円の罰金が課されます。

4 代執行

命令にも従わないと、事前に通知した上で市町村が空き家の強制解体を行います。解体に要した費用については空き家の所有者等に請求がなされます。

空き家管理の方法と業者に頼むメリット

空き家はそのままにしておくと資産価値は低下しますし、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律により行政から「特定空家等」にしてされてしまうと、土地の固定資産税の優遇措置が適用されなくなるなどのデメリットがあります。

「特定空家等」にしてされてしまうと、固定資産税は最大6倍にもなってしまうのです。

「特定空家等」に指定される状況としては、

  • 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
  • の4つが挙げられています。

空き家になるとすぐに傷みはじめる

家屋は空き家になるとすぐに傷みはじめます。

定期的に窓をあけて室内の通気をしないと、湿気がこもって床や家具にカビが生えたり、シロアリが発生しやすくなります。

庭の手入れを放置すると、庭木や雑草が伸びて近隣に迷惑をかけるようになります。

また徐々に蚊・ハエ・ネズミ・野良猫の棲家となっていったり、不審者が入り込んだり、ゴミの不法投棄場所となることも珍しくありません。

台風や大雨など自然災害によって、倒壊・屋根や外壁の落下などが起こり、そのままになる可能性もあります。

しかし、これらは定期的に確認し管理を行なっていけば十分に防げる事柄です。

そこで、空き家を上手に管理するためのポイントについてまとめてみました。

空き家管理の方法

1 室内の通気・換気

家中のすべての窓を開け放ちます。タンスや戸棚、下駄箱や押し入れの戸なども開けて湿気を逃がしましょう。

2 郵便ポストの確認

ポストにチラシなどがたまっていると空き家だということがすぐに分かり、防犯上も好ましくありません。チラシや郵便物はすべて取り出して持ち帰って処分しましょう。

3 敷地内の清掃

敷地内のゴミを拾い、落ち葉などはホウキではわいておきます。

4 水道メーターの確認

漏水が生じていないかを確かめるため水道のメーターを点検し、メーター内のパイロットが回っていないか、使用していないのに使用量が増えていないか確認します。

5 建物外部の点検

外壁・屋根・軒裏・基礎・塀などを見て回り、破損やひび割れが起きていないか、補修が必要かどうかをチェックします。修理の必要な箇所は写真に撮っておくとよいでしょう。

6 建物内部の清掃

ホウキやハタキを利用してたまったホコリを落とします。床は掃除機やクイックルワイパーなどで清掃します。

7 室内の雨漏りや補修箇所の点検

室内の天井や壁などを見て回り、雨漏りや破損がないかチェックします。

8 建具の点検

窓やドア、障子やふすまなどを実際に開け閉めして動作に問題がないか確認します。

9 通水

キッチンや洗面所、トイレなどの水道を1分程度通水します。長い間水道を使用していないと、排水管の中(トラップ)の水が蒸発して、悪臭や害虫が上がってくるためです。

10 戸締り・施錠

建物の戸締りと施錠をし、閉め忘れがないように建物の内部も外部も確認して完了します。

最低でも月1回は継続的に行っていきましょう。

空き家管理業者に頼むメリット

有料で空き家の管理サービスを行っている業者が全国各地にあります。

作業内容としては、「郵便ポストの確認」「窓やドアの確認」「庭の掃除」「屋内の風通し」「屋内の掃除」「台風後の見回り」などが含まれます。

実家から離れて暮らしている方が多い中で、このようなサービスを利用すれば空き家の管理だけのためにわざわざ帰る必要がなくなりますし、家屋の状況がいつも把握できるので安心です。

空き家の法律を活用する

空き家対策特別措置法は空き家に迷惑を感じている人にとっても、空き家の持ち主にとっても、活用できる部分があります。

近所の空き家問題を解決する方法

既に述べた通り、法律施行前は近隣の空き家にどんな悪影響を受けているとしても、またそのことでトラブルが生じたとしても、個人間で解決するしかありませんでした。

一部の自治体では条例によって強制解体が行われてきましたが、件数としては少ないものでした。

しかし、空き家の法律ができたことで市町村役場は住民から空き家管理のことで苦情が上がれば動かざるを得なくなりましたし、解決するための権限が与えられました。

今後は周辺の空き家で困るような状況があれば、法律を根拠として市町村役場に相談にいけば、解決できる見込みが高くなりました。

助成制度の活用でしっかり対策を

空き家の所有者にとっては、今までと違って空き家を放置すると固定資産税が上がったり、行政から処分を受けるなど何かと面倒なことになります。

しかし、空き家を適正に管理すれば資産としての価値を極端に減らさずに住むわけですから、考えようによっては持ち主にもプラスになる面があります。

また空き家特措法の施行に伴って、様々な助成制度や補助金制度が創設されていますから、空き家を利活用するためのかつてないチャンスが訪れたとも言うことができます。

そのような助成制度は各自治体によっても異なりますが、代表的なものを幾つかピックアップしてみます。

空き家バンク

空き家バンクは売りたい人と買いたい人、貸したい人と借りたい人を自治体のサイトなどを通してマッチングさせるサービスです。移住を検討している人などを中心に徐々に利用数が伸びてきています。

交渉や契約については、当事者同士で行うか、地元の不動産業者が間に入るしくみになっています。自治体によっては、買主や借主に改修のための補助金制度を設けているところもあります。

リフォーム助成

空き家を売却したり賃貸するために改修工事を行う場合に、その改修費用の1/5~1/2程度、上限100~200万円で補助金を出してくれる自治体があります。耐震改修を行うことなど、それぞれに条件が定められていますのでよく確認しておきましょう。

除却助成

特定空家に指定される可能性のある老朽化した空き家を解体する場合に補助金が出ます。その補助割合や上限額は各自治体によって異なります。やはり細かい条件が定められていることが多いので確認が必要です。なお解体前に申請する必要がある点は注意が必要です。

住宅セーフティネット制度

賃貸住宅や空き家を高齢者や子育て世代など住宅確保要配慮者のための住宅として登録する制度で国や地方公共団体が運営しています。空き家の持ち主は、高齢者などの入居を拒まない賃貸物件として都道府県に届け出れば、この制度のデータベースに登録され、物件が広く周知されることになります。また一定の条件を満たせば、上限200万円まで改修費の補助金が出ます。(根拠法:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)

その他の空き家活用法

空き家を活用するには、身内が使用する以外には売却するか貸すかということになります。

しかし、貸す場合でも少し工夫することで需要を増やすことが可能となりますから、最近の流行や新しいサービスについて情報を集めてみると良い活用法が見つかるかもしれません。

比較的新しい空き家活用のアイデアをいくつかピックアップします。

DIY賃貸住宅として貸す

現在はDIYが流行しており、賃貸住宅であっても自分の好みにカスタマイズしたいという需要は多くあります。そこで空き家を現状のまま貸す代わりに入居者が自由に改装してよいという条件をつけるのがDIY賃貸住宅です。

通常の賃貸契約では契約者には室内を入居時の状態に戻す原状回復義務がありますが、DIY賃貸住宅では契約書から原状回復の規定を除きます。ただし、住宅の主要構造部は変更しないなど契約に含めておくべき重要な条項もありますから、トラブルを避けるためにも専門家のアドバイスを受けながら契約すると良いでしょう。

民泊施設にする

民泊サイト「エアビーアンドビー」の人気により、自分の部屋や家を民泊施設と活用して収入を得ている人も増えています。外国人観光客も増加しており、ホテルではなく日本の民家に泊まってみたいという需要もありますから、空き家を民泊として利用するというのもよい方法だと思います。ただし現時点では、民泊サービスを行う際には「簡易宿所営業」の許可を取る必要がありますから注意が必要です。

シェアハウスとして貸す

シェアハウスとは、1軒の家に数人~数十人の入居者がそれぞれ個室で生活しながらも、共有するスペースもあるというかたちの住宅です。

コストパフォーマンスの良さから若者を中心に人気があります。また最近は外国人労働者も増えており、会社の寮のようなかたちで外国人が共同生活できる物件の需要が増えつつあります。

コミュニティースペースにする

空き家を地域住民のふれあいの場として提供するなら地域への貢献にもつながります。カフェや集会所、図書室などとして利用しているケースが増えています。

低額で自治体やNPO団体に貸したり、無償で提供する場合が多いので収益は期待できませんが、人に喜ばれる活用の方法となります。

ただし、収益が少ないため、管理をどのように行っていくのかという点については十分な検討が必要です。

空き家活用の注意点

空き家を上手に活用するためには、チャンスが訪れたらいつでも対応できるようにしておくことがカギとなります。

そのためには以下の2つの点を日頃から意識しておきましょう。

きちんと管理をしておく

既に述べた通り、家は人が住まなくなると早期に傷みはじめ荒れていきます。そうなると、また人が利用できるようにするためには時間と費用がかかってしまいます。

家を良い状態で維持するには、やはり定期的なメンテナンスが欠かせません。月に一回は全部屋の窓や戸を開けて換気をし、すべての水道の蛇口は通水をしておきましょう。

その他にも敷地全体を注意深く点検して補修の必要な個所を確認したり、庭の草刈りや剪定、ゴミ拾いや掃き掃除なども可能な限り行っておきます。

空き家管理を代行してくれる業者もありますから、そのサービスを利用するのも一つの方法です。

権利をスッキリさせておく

空き家の取得理由の半数以上は相続によるという調査結果があります。相続した空き家は、法定相続人の共有名義になっているケースが少なくありません。

また遺産分割が済んでいない場合にも、名義に関わらず相続人全員で共有している財産となります。

このような空き家については、共有者全員の同意が得られなければ売ったり貸したりできませんから、活用できないまま老朽化していくことがよくあります。

それではせっかくの宝も持ち腐れになってしまいますから、相続が生じたら早めに解決すると共に、なるべく単独の名義にしておくことが大切です。

別の問題となりやすい事例は、家の名義人が認知症になった場合です。

このような場合には、家庭裁判所において成年後見人を選任してもらわなければ、売却や賃貸などの際の契約行為が行えなくなります。

一方で、相続や認知症に対して事前に行える対策もあります。

相続であれば遺言書の中で空き家の相続人を指定しておくことができますし、認知症に対しては任意後見契約や家族信託といった方法で、認知症になった時に空き家の管理を任せる人を指定しておくことができます。