遺産相続の際の不動産の扱いに関して悩んだり迷いを抱えておられる方はとても多いようです。
たしかに金銭でしたら、価値もわかりやすいですから分けやすいですし、貯蓄するにしろ何かを購入するにしろ利用の仕方はいろいろあります。
しかし不動産の場合は、価値が分かりにくい上に、利用の仕方も限定されるという特徴があります。
ですから、遺産分割の話し合いも、その後の活用もとても難しいのです。
この記事では、不動産の遺産相続を上手に進めていく3つのポイントについてまとめています。
目次
不動産の遺産相続が失敗する理由
様々な事例から不動産の相続で失敗につながった要因をまとめると、大きくは次の3つに分けられると思います。
- 相続人同士の話し合いがまとまらない
- 不動産活用の情報が不足している
- 適切なアドバイザーを見つけられない
このような要因がもとになって、不動産の相続が事実上凍結状態になったり、裁判沙汰になったり、相続できたものの後で後悔をしてしまうことがあります。
では、それぞれについて対策のアイデアをまとめます。
相場を知ることで話し合いをスムーズに
不動産の価値が分かりにくいということが原因となって、分割協議が進まなかったり、相続人同士が疑心暗鬼になることはよくあります。
価値を知るためには、やはり取引相場を調べて金銭に換算しなくてはなりません。
尚、この場合の市場価値は、役所で設定されている固定資産税評価額とは異なりますので注意が必要です。
一つの方法としては、近くの不動産屋に査定を依頼するという方法があります。
しかし、不動産業者には高く売れるよりも早く売れたほうがよいという考えのところも多く、また査定に関しては専門スキル以外に経験や勘といったものも必要になるため、業者によって査定額が大きく異なることが珍しくありません。
査定額に数百万円の差が出ることはざらです。
また1社だけに依頼すると、そこが悪質な業者で安くたたき売られるリスクもあります。
そこで、一番おすすめなのは複数の不動産業者に査定を依頼することです。
今はインターネットを使えば無料で一括査定してくれるところもありますから、複数社に査定を依頼することも比較的気軽に行なえます。
情報源を見つけて不動産活用の情報収集を
売却だけにこだわっていると、土地も建物もなかなか売れずにいわゆる「塩漬け」状態になってしまうことがあります。
しかし、活用の幅が狭いように感じる不動産ですが、情報を集めるといろいろな活用法があることに気づきます。
例えば、多くの自治体では「空き家バンク」が設置されており、かなり年季の入った家でも利用を希望する人からの問い合わせがあるようです。
また民間業者を仲介に入れる場合でも、適切なリフォームを行なう事で資産の価値は何倍にも高まり、賃貸にしろ売却にしろお客がつきやすくなります。
もちろん相続した家に住むという選択もあり、この場合でも老後資金を増やすために、遺産の不動産を担保としてリバースモーゲージ制度を利用するなどの選択肢があります。
このような不動産活用の情報は、書籍・インターネット・セミナーなどを通して得られます。
その際には、なるべく最新の情報を探すことが大切です。
不動産や相続に関する法律や制度は頻繁に変更があったり、新設されたりしますから、古い情報を参考にすると間違ってしまうことがあります。
実績のあるアドバイザーを探す
不動産の遺産相続・活用に関しては、やはり専門家のアドバイスやサポートを求めるほうが安心ですし、賢明です。
自分で情報を収集し知識をつけることは大切ですが、それは選択の幅を広げるためのものであり、実際に実行に移すとなると経験がものを言います。
相続の手続きの面でも、進め方の点でも、税金や不動産契約についても、本の知識だけでは補えないところが多く、経験と実績の豊富な専門家に依頼しなければ大きな損失が生じてしまうことがあります。
通常はアドバイスを求めて不動産業者に相談することが多いかと思いますが、相続が絡んでいると特殊な知識や経験が求められます。
例えば、不動産を現金化してから相続人で分割することを法的には「換価分割」と言い、換価分割については譲渡所得税がかかります。
しかし、居住用不動産については控除がありますから、この知識があるかないかで税負担についても大きく変わります。
ですから、なるべく相続に強い不動産業者に任せたほうがよいと思います
相続に詳しいかどうかは、こちらの質問に対する対応である程度判断することができますし、会社のホームページやチラシなどからも情報が得られるかもしれません。
特に複数の土地建物が遺産として存在する場合には、実績豊富な不動産アドバイザーを探しましょう。
不動産の遺産相続の流れ
不動産を含め遺産(相続財産)の相続は、法律に定められた方法で行なう必要があり、自分や家族がいくら主張しても法的な手続きに従っていなければ無効となります。
不動産の相続手続きの流れは、遺言書の有無、相続人各自の状況などによっても変わってきますが、基本的には以下のような順序で進める必要があります。
1 相続人の確定
相続財産の取得については、相続人全員に権利が生じますから、まずは相続人を全て確定する必要があります。
これについては、法律によって定められた順位に従って、配偶者や子、親、兄弟、孫や甥姪などが該当する場合があります。
きちんと確定手続きを行うために市町村役場で被相続人と相続人の戸籍謄本を取得し、戸籍の記録に従って相続人が決められていきます。
家族関係について当事者同士でどんな認識をもっていたとしても、戸籍に記載されていることが法律的には正解とみなされます。
2 相続する不動産の調査・評価
不動産の詳細な内容と評価額を証明する資料を集めて、対象となる不動産をはっきりさせます。
これについては、市町村役場の固定資産税に関する名寄帳や法務局で取得できる登記事項証明書・字図などが資料となり、これらは名義変更手続きにも必要となります。
また市場価格に関する査定書や現地調査の記録も評価を行なうために貴重な資料となります。
3 遺産分割協議
相続人全員で相続対象の不動産をどのように分けるかを話し合います。
その話し合いの結果は遺産分割協議書という文書にまとめます。
遺産分割協議書も名義変更手続きに必要となる書類のひとつですから、決められた書き方に従って作成しておく必要があります。
なお法律では法定相続分が定められていますが、これはあくまで目安ですので、誰がどの不動産を相続するか、共有するか単独で相続するかなどは話し合いで自由に決定できます。
4 名義変更手続き
遺産分割協議の結果に基づいて、名義変更手続き(相続登記申請)を行ないます。
正式には不動産所有権移転登記と言い、管轄の法務局にて行ないます。
その際に税金として登録免許税の納付が必要となります。
以上が一般的な不動産相続手続きの流れですが、売却する場合や他の相続人に代償金を支払う場合、借地や賃貸物件を相続する場合などはそれぞれ異なった手順が必要になることがあります。